| ■ガーデニングクリエーターとして活躍のたなかやすこさんにお話を伺います。 実は彼女と僕は20年来の友人です。 |
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--こんにちは。今日は改めてだけど今の活動のことを聞かせてもらいますね。 それじゃ最初は、野菜菜園を始めることになった、きっかけからお願いします。
ある日、ご近所の友人から採りたてのミニトマトを房ごともらって、とにかくキレイで感動したの。金色の産毛や房全体の有機的な造形美が衝撃的だった。もちろん香りや味もぜんぜん違ってて。それで自分でも作ってみたくなって畑を借りたのが野菜とのつきあいのはじまりね。
--で、つきあいの内容は?
契約した畑とマンションのベランダに、野菜を中心にハーブやベリー、バラなどいろいろ栽培してる。でもたくさん収穫して自給自足するとかが目的じゃない。 野菜が育つ過程の美しさを眺めて観察日記をつけたり、スケッチを描いたり。 収穫はもちろん食するし、あとは飾りものにも使う。そして出来た種からまた次を育てる。 そんなふうに、野菜と暮らすつきあい全体を楽しんでるの。
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--食べるは一部なんだ。 最初に出会ったミニトマトの「キレイ」の感動が続いてるんだね。
野菜のスケッチはそこにあるものをそのまま描くだけで十分かっこいい。力強いし、美しい。自然の力や美はすごいって思う。 売ってる野菜が残念なのは葉っぱや枝がついてないこと。もっと生きてた証を残して売ってくれればいいのにね。
--ヘタをキッチリ切り落としてパックされたナスなんて、形もサイズもぴったり揃ってて工業製品みたいだよね。
四角いトレーにぴったり密封されているのをみると、息苦しそうでかわいそうになっちゃう。 実際、曲がったものの方が絵にもなるし、せっかくの収穫なんだから、曲がったものでも、いびつなものでも、それを生かして使えばいいと思う。
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--イタリアではスーパーも量り売りだから、いろんな形やサイズのものがドンって混ざって置いてあった。形やサイズをそろえないとダメなんて不自然だし無駄だよね。 ところで食べる方での楽しみは?
最高の贅沢は収穫後の新鮮なうちに食べること。やっぱり買ってきたものとはぜんぜん違う。複雑に混ざったそれぞれの味にちゃんと主張がある。売ってるものは妙に甘さだけが強かったりする。 それに同じ収穫内でも差があって、すでに野菜グルメの息子達は一緒に採ったトマトでも水洗いのボウルで沈んでいるのをちゃんと選んでもってっちゃう。 あとは間引いた野菜の使い方かな。育てる過程では間引きという作業が必ず必要になるの。普通なら捨てちゃうような、小さな収穫もちゃんと食して楽しんでる。 例えば小さなキュウリは箸置きとして出してそのまま食べちゃうし、ルッコラの双葉はゆで卵の上にちょとトッピングするとかして。 最近はいろんなスプラウトが売られているけど、間引きした双葉は正にそれと同じ。小さくて形は違っててもちゃんとその味がするの。子供と何の双葉か当てっこするのも楽しいよ。
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--ハーブとのつきあいは?
畑の中にタイムの小道を作りたくてはじめたの。踏んだときにハーブの香りがするっていいなと思って。一応、スカボロー・フェア(byサイモン&ガーファンクル)の歌詞に出てくるものはみんなそろえてみた。 ハーブに限らず、いろんなものを植えた方が畑にはいいことだしね。
--無農薬とかじゃなくて?
結果的にはそれにつながるけど、まずはいろいろな植物があることが大地にとっては健全なの。例えばキャベツだけを植えてると特定の栄養素だけが土から減っちゃう。 今でも畑の中心はきっかけのトマトなんだけど、いろんな植物を植えてバランスを取ることで微生物やミミズがちゃんと育つ土作りになっていて、それが無農薬につながっていく。 だからベランダのプランターにもあえてミミズを入れてるし、あと蜂や虫が自然に来ることも重要よ。 |
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--ところでトマトといえばイタリア。 確か前に、本場のトマトを求めてイタリア旅行に行ったでしょう。市場で使えるイタリア語会話をいくつか聞かれて渡した覚えがあるんだけど。
そう、すべてはトマトとの出会いがきっかけだし、トマトほど品種の多い野菜もないの。だからトマトには一番こだわりがあって、まずはいろんなトマトを育ててみたの。海外から種を取寄せたりもして。 でもいろんなトマトを育てているうちに、やっぱり本場の味が知りたくなって、イタリアに行くしかないと思った。 だってイタリアによく行く友人から"ナポリのトマトソースを食べずして、トマトソースを語るなかれ"なんて言葉があるって聞いたから。
--ホント?その言葉は知らないけど、確かに向こうのトマトは違ってた。種類もいっぱいあったしね。 はじめてだったらメルカート(市場)は面白かったでしょう?
そう、ナポリはホテルが偶然にも青果市場の正面という絶好のロケーションだったの。本当にラッキー。 毎日通ったけど、例えばトマトの箱には実と一緒に採った葉っぱつきの茎が並べてあって、キレイだし、何より新鮮さをアピールしてるのが分かった。それを写真に撮っていると、おじさんがさっとさらにかっこよくアレンジしてくれたりして、イタリアは八百屋さんまでスタイリスト!って感心した。
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--そのおやじの様子は目に浮かぶな。で味見の方は?
とにかくナポリに限らず他の街に移動しても、必ず毎日トマトを買って帰って、ホテルで食べくらべをしてた。モッツァレラチーズや生ハムといっしょにね。本場の味の確認や新たな味との出会いで最高だった。 ただし食べる前には必ず品種名を書いたタグをつけての写真撮影とスケッチ。 食後は採った種をティッシュにくるんで日本から持参したジップロックに品種別に整理。とにかくけっこう大変だった。 結局、グラッポーリやスーパーローマなんか20種類ほどの種を持ち帰ったかな。 |
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--すごいね。20種類もすごいけど、食べる前後の一仕事も大変そう。
そうね、今や決まりとなった私の食前スタイル、「しばし左手に野菜、右手に色鉛筆」はこのときに完成したのかも。 とにかくそんな風にナポリ、ローマ、フィレンツェと回って来たの。
--なるほど。 そうやってトマトをきっかけにいろんな野菜を勉強して、りっぱな園芸家になったんだ。 |
うううん。私は園芸家じゃないしガーデナーでもない。 むしろガーデニングに関してはずっと素人のままでいいと思っているの。しいて名前をつけるならガーデニングクリエーターかな。 つまりガーデニングそのものじゃなくて、最初に言ったように、野菜との暮らしの楽しみ方を工夫して、クリエートして、そのアイディアを発信していきたいの。
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--園芸家との違いをわかりやすく言ってもらうと?
例えばプロの園芸家なら多くの収穫のために、種はいつ頃に、何cm間隔に植えて、何日目には何をして、なんてことが重要になってくる。私の場合はそういう知識より、生長を見守ってスケッチしてると野菜の方から「そろそろ間引きして!」とか、「肥料が欲しい!」とか言ってるのが聞こえてきて、それに答える育て方なの。 それに予期せぬ天候もあるから、結果的にうまく育たないことがあってもそれはそれで仕方ないと思ってる。 普通の人って野菜は食べるところしかほとんど接点がないでしょう。 でも野菜って本当に種まきからまた種になるまでを観てると短い一生の中でホントに次々と変わる様を見せてくれるのよ。「見て!見て!」って言ってくる。 いとおしくて、きれいに育てたくて、その美しさを絵に出来て、その上食べられる。インテリアの飾りにもできる。 つまり私にとっての野菜は花と同様か、それ以上の楽しみ。 "見た目に美しい家庭菜園"、"オーナメンタルキッチンガーデン"ね。 |
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| --野菜を花のように楽しむ。野菜と美しく暮らす。いいよね。 ヨーロッパではよくフルーツを籠やボウルに飾るし、ミラノの家具屋やブティックなんかだと、珍しい果物や野菜を凝って飾ってあることもある。向こうは空気が乾燥してるから扱いやすいしね。僕もドライフルーツ作りにちょっとチェレンジしてみてた。 向こうのそういうのに通じるのかどうか分からないけど、今度、その野菜を使ったインテリアオーナメントを是非見せて欲しいな。それに野菜のスケッチも。 |
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実は昨年はじめて、今まで出版した本の原画を使って京都の山崎で個展を開かせてもらったの。 おかげさまで好評で、今年もまた開催する予定。こんどは絵だけじゃなくて、インテリアの飾りも出展するつもりなので是非見て欲しいと思ってる。 まだ詳細は決めてないけど、これまでにやってきたことや新たな試みも出してみたいと思ってます。
--是非見てみたいな。「野菜と美しく暮らす」全貌を。はっきりしたらまた詳しく教えて下さい。では今日はどうもありがとうございました。
■インタビュー後記
久しぶりにまとめて話をした彼女はりっぱな野菜の先生でしたが、やっぱりデザイナー心も健在でした。ますますのご活躍をお祈りします。
■さらにその後、彼女からパリーノに注文をもらい、その上に素敵な使い方のご提案まで頂きました。ありがとうございます。
■たなかやすこさんのホームページ
http://www.greengloves.jp/index.html
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